「学校も遅刻しがちなのに…」起立性調節障害の子が兵庫県の「トライやる・ウィーク」に参加するための優しい教科書
兵庫県内の中学2年生にとっての一大イベントであり、5日間にわたって地域で職場体験を行う「トライやる・ウィーク」。
普段通りに学校へ通えている子にとってはワクワクする行事ですが、起立性調節障害(OD)のお子さんを抱えるお母様にとっては、この時期が近づくだけで胃がキリキリと痛むほど悩ましい問題ですよね。
「毎日のように遅刻や欠席をしているのに、5日間も朝から夕方までよそのお店で働けるわけがない……」
「もし途中で倒れたり、ドタキャンしたりしたら、受け入れ先のお店や学校に迷惑がかかってしまう」
そんな不安で頭がいっぱいになり、「いっそのこと、最初から『欠席』にしてもらったほうが楽かもしれない」と追い詰められているお母様。本当によく頑張って悩んでいらっしゃいますね。
今回は、そんなお母様の心の荷物をフッと軽くするために、起立性調節障害のお子さんがトライやる・ウィークとどう向き合えばいいのか、臨床現場の視点から「優しい考え方と具体的なステップ」を解説します。
結論:5日間フル参加なんて目指さなくて大丈夫!「ひと口すする」だけで100点満点
まず、プロとしての結論からお伝えします。
「朝から夕方まで、5日間完璧にやり切る必要なんて一切ありません。学校とは違う『社会の空気』を、ほんの少し、ひと口すするだけで大成功。100点満点の大正解です!」
当院のブログでいつもお伝えしている水分補給のルール(「2リットル飲めなくても、スープをふた口飲めたら大成功」)と全く同じです。行事だからといって、「100点か0点か」の極端な2択で考える必要はどこにもありません。
「でも先生、学校に行けていないのに、職場体験なんて本当にできるの?」
そう疑問に思うお母様へ、実は臨床現場だからこそ分かる「ある不思議な現象」についてお話しします。
臨床現場のリアル:なぜ「学校は無理でも、職場体験なら行ける子」がいるのか?
お母様は「学校すら行けないのに、働くなんて無理」と思いがちですが、実はここが大きな勘違いのポイントです。
起立性調節障害のお子さんにとって、「学校」という場所は、私たちが想像する以上に自律神経を緊張させるストレス因子(バグの原因)が溢れています。
- 教室の独特な空気感や同調圧力
- クラスメイトや先生からの視線
- 「勉強が遅れている」という焦りやプレッシャー
朝、これらのストレスを脳が察知すると、自律神経がガチガチに緊張してしまい、防衛反応として体にブレーキをかけます。その結果、血圧が下がって朝起きられなくなるのです。
一方で、トライやる・ウィークの「職場」は、学校の人間関係やプレッシャーから完全に切り離された空間です。
実は、「学校の教室にはどうしても入れないけれど、大好きな本に囲まれる本屋さんの品出しや、動物園の飼育員、静かな軽作業なら、なぜか朝からシャキッと行けた」という起立性調節障害のお子さんは、臨床の現場でも決して珍しくありません。
学校に行けないからといって、「この子にはまだ社会経験なんて早い」と親が可能性を閉じてしまうのは、非常にもったいないことなのです。
「トライやる・ウィーク」の職場の選び方
学校(地域)によって職場(職種)の選択の幅に差があります。
やってみたい職業を体験させたいという気持ちはわかりますが、親としてわが子にこういうことはできないんじゃないか?と
迷うこともあると思います。
そういう親御さんのために選び方のポイントをお伝えします。
1,朝が早い職場を避ける
例えばパン屋さんやお弁当屋さんなど朝の早い職場を避けるということです。
パン屋さんなどの場合朝5時には起きて準備しておかないとなんてこともあります。
普段午前中に起きれないお子さんにとってなかなかハードルの高い職場になります。
そういう朝早めの職場を避けるというのも一つの選択です。
2,対人型の職場を避ける
介護施設、病院、保育所、小学校、幼稚園、飲食店などはどうしても精神的に負担になるお子さんもおられます。
とはいえ対人型の職場が好きというお子さんもおられるはず。
そういうことから考えると絶対ダメというより、お子さんと相談して進めるというのが良いでしょう。
また調子が悪くなった場合家から近いか、中学校から近いかということも判断材料になります。
3,遠方の職場を避ける(電車やバスでしかいけない職場)
起立性調節障害のお子さんでよく見る症状で、「車酔い」「乗り物酔い」がキツイお子さんがいます。
そういうお子さんの場合、遠方までバスや電車での通勤が負担になることがあります。
うちの子は「乗り物は大丈夫」という場合は考えなくても大丈夫だと思います。
4,暑い環境の職場や汗を多くかく職場を避ける
多く汗をかく職場、や外での作業が多い職場は避けることが賢明でしょう。
汗を多く出すことで、水分バランスが崩れ体調が急に悪くなる子供さんもおられます。
しっかり水分(水筒)を持たせるとともに、塩分補給(塩飴や塩タブレット)が摂れるように準備しておくことも大切です。
体調を崩さないための「トライやる・ウィーク」新ルール
とはいえ、無理をして体調をドカンと崩してしまっては元も子もありません。 明日から学校や先生に相談できるように、自律神経に優しい「4つのオーダーメイド参加プラン」を用意しました。お子さんの今の体調に合わせて、グラデーション(段階的)に選んでみてください。
①【期間短縮プラン】:「体調が良い日だけ」行く
5日間のうち、「3日目と4日目だけ参加します」という形です。あらかじめ学校と受け入れ先に「体調の波があるため、飛び石での参加になる可能性があります」と伝えておけば、お母様のドタキャンへの不安も減らすことができます。
②【時間短縮プラン】:「午後から」行く
起立性調節障害の基本は、午後に向けて自律神経が元気になっていくことです。 「朝は起きられないので、午後(13:00〜16:00)の3時間だけ体験させてください」という交渉は、学校側も非常に受け入れやすい現実的なラインです。
③【裏方限定プラン】:「接客なし」でお願いする
人前に立つレジや案内などの接客は、極度の緊張から血圧を急低下(起立性低血圧)させ、めまいや吐き気を引き起こす原因になります。 「お店の裏での商品の仕分け、ハンガーかけ、清掃など、マイペースに動ける裏方作業を中心にお願いしたい」と事前に伝えてもらうのも立派な対策です。
④【完全見合わせプラン】:「今回はお休み」と割り切る
もし、現時点で起き上がることも難しく、食事や水分も十分に摂れていないエネルギー切れの状態であれば、今回は「体を作る時期」と完全に割り切って、お家や保健室でゆっくり過ごしましょう。周りと比べて焦る必要は1ミリもありません。
学校や担任の先生への「具体的な相談の切り出し方」
「学校の先生に、そんなワガママな相談をしてもいいの?」と不安になるかもしれませんね。大丈夫です。先生方も、せっかくの行事だからこそ「少しでも生徒に良い経験をさせてあげたい、でも現場で倒れられたら困る」と、対応に迷っていらっしゃいます。
相談するときは、以下のようにお母様から切り出してみてください。
「子ども自身、トライやる・ウィークに『行ってみたい』という気持ちはあるようなんです。ただ、起立性調節障害の特性で朝の体調にどうしても波があります。ご迷惑をかけないために、例えば『午後からの参加』や『体調が良い日だけの参加』といった形で、配慮をいただくことは可能でしょうか?」
このように「子どもの前向きな気持ち」を伝えた上で、具体的な妥協案を提示すれば、学校側も受け入れ先企業とスムーズに調整しやすくなります。
お母様へ。今回の経験を「自信」に変えるために
お母様、「みんなと同じように5日間行かせること」をゴールにしないでくださいね。
大切なのは、お子さんが「自分で決めて、できる範囲でやってみた」という小さな成功体験です。
たとえ5日間のうち、たった1日の午後、2時間しか参加できなかったとしても、それは「動かない体を起こして、社会の中に一歩踏み出した」という、とてつもなく偉大な一歩です。帰ってきたら、笑顔で「頑張って行けたね、すごいよ!」と、思いっきり褒めてあげてください。
普段学校に行けていないうちの子が「お母さん小学校で2年生の子供と遊んだけど、めっちゃ楽しかった」という話で自宅で盛り上がった。
といううれしい声も聞かれたと聞きます。
「かわいい子には旅をさせよ」と手放しで言えないかもしれませんが、お子さんにとって貴重な体験になることを願います。
もし、1日も行けなかったとしても、自分の体調(自律神経のサイン)としっかり向き合った大切な1週間です。どちらの結果になっても、お母様が自分を責める必要は絶対にありませんよ。
「行事の前後に体調が崩れそうで心配…」という時は
「トライやるに向けて、少しでも朝の血流を良くしてあげたい」 「行事が終わった後、ドッと疲れが出て寝込んでしまわないか不安」
そんな時は、一人で抱え込まずにいつでも当サイトのLINE無料相談を頼ってくださいね。
当院のLINE相談では、
- 大切な行事の朝、少しでも体を動かしやすくするための東洋医学的なセルフケア
- 自律神経の緊張をフッと緩める、親子でできるリラクゼーション法
など、臨床経験に基づいた、一人ひとりに合わせた具体的なアドバイスをお届けしています。
お母様、あなたが笑顔で「ふた口行けたら大成功だよ」と送り出してくれる安心感こそが、お子さんの自律神経を緩める一番の特効薬です。
まずは、その張り詰めた肩の力をフッと抜いて、今の不安を少しだけ私に分けてくれませんか?

