起立性調節障害の検査で異常なしと言われたら?症状が続くときの考え方
「毎朝どうしても起き上がれない」「頭痛や立ちくらみがひどくて学校へ行けない」——そんなお子さんのつらい様子を見て医療機関を受診したものの、検査結果は「異常なし」。
そう説明されたとき、親御さんとしては安堵する気持ちがある一方で、「こんなにつらそうなのに、原因がわからないの?」「本人の気のせいや怠けだと言われているようで納得がいかない」と、大きな困惑や焦りを感じてしまうのではないでしょうか。
医療機関での「異常なし」という結果には、医学的な意味や目的が存在します。しかし、「異常なし」という言葉は決して「症状が存在しない」「本人が怠けている」という意味ではありません。
この記事では、各種検査で「異常なし」と判定された場合の捉え方、それぞれの検査で分かること・分からないこと、危険な症状のチェックポイント、そして症状が続く場合に医師とどのように相談を進めていくべきかについて分かりやすく解説します。
「異常なし」は症状がないという意味ではない
まず理解しておきたいのは、検査結果と本人が実際に経験している症状のつらさは、必ずしも比例するわけではないということです。
検査にはそれぞれ調べられる範囲がある
医療機関で行われる検査には、それぞれ「何を調べるための検査か」という明確な目的と範囲があります。
- 血液検査: 貧血や炎症、臓器の機能、電解質バランスなどの異常を調べる
- 心電図検査: 心拍のリズムや電気的な伝導の異常などを調べる
- 新起立試験: 起立時の血圧や心拍数の変化パターンを調べる
このように、それぞれの検査が捉えられる範囲は限られています。「異常なし」という結果は、実施した検査項目について、判定基準を超える異常が確認されなかったことを意味します。身体のすべての病気や不調が否定されたという意味ではありません。
症状は本人が実際に経験していること
検査で明確な異常が確認されなくても、本人が実際につらい症状を経験していることまで否定されるわけではありません。朝起きられない、立ちくらみがする、強い倦怠感があるといった症状にお子さん自身が苦しんでいるのは事実です。
検査結果だけを理由に「気の持ちよう」「怠け」「仮病」などと決めつけることは避けなければなりません。一方で、「検査がすべて正常だったから、絶対に起立性調節障害(OD)に違いない」と逆方向に断定することも避け、慎重に評価を重ねていくことが大切です。
どの検査で「異常なし」だったのか確認する
一口に「検査で異常なし」と言っても、どの検査を受けたかによって意味合いが大きく異なります。行われた検査項目と、その結果が持つ意味を整理してみましょう。
血液検査が正常だった場合
血液検査は、身体の中で炎症が起きていないか、貧血や低血糖がないか、肝臓や腎臓の機能、電解質のバランスなどに問題がないかを確認するために実施されます。症状や診察所見に応じて、甲状腺機能などの項目が追加されることもあります。
血液検査は他の全身疾患や器官の異常がないかを確認するために重要ですが、実施した項目では明らかな異常が確認されなかったと捉えます。血液検査で分かる範囲は検査項目や検査時の状態によって異なるため、結果の意味を詳しく医師に確認することが大切です。
心電図が正常だった場合
心電図検査は、心拍のリズムや電気的な伝導の異常などを確認する検査です。
安静時に行う通常の短時間の心電図検査が正常であったとしても、それは「検査を行っているその時点の心電図において判定基準を超える異常が見られなかった」ということを示しています。日常のふとした瞬間や、特定の時間帯だけに現れる一時的な変化までを必ず捉えられるわけではありません。
症状の現れ方や診察時の所見に応じて、24時間の心拍の変化を記録するホルター心電図などが検討される場合があります(※すべての受診者に一律で必要なわけではありません)。
新起立試験で基準を満たさなかった場合
症状があっても、新起立試験でガイドライン上の病型判定基準を満たさない場合があります。
新起立試験の結果は、以下のさまざまな要素によって影響を受けます。
- 測定時の環境や条件(部屋の温度や静けさなど)
- 検査前の安静時間や姿勢
- 検査を実施した時間帯(午前か午後か)
- 当日の体調や睡眠状態、直前の食事や活動量
- 服用しているお薬の影響
検査条件や当日の体調なども確認し、結果と普段の症状が一致しない場合の評価方針について医師へ相談してみましょう。
新起立試験で異常が出ないときはどう考える?
一度の検査結果だけで自己判断しないことが大切です。
自律神経の働きや循環系の反応は、日によって、あるいは一日の中でも時間帯によって変動します。検査結果は診断のための重要な判断材料ですが、数値の有無だけで機械的にすべてを判断できるものではありません。
再検査が必要かどうか、あるいは時間を置いて経過観察を行うべきかは、日頃の症状の強さや生活への支障度を踏まえて医師が判断します。
家庭用血圧計と新起立試験の違い
「家で測ると血圧が下がっているのに、病院の検査では正常と言われた」という疑問を持つご家庭もあります。
家庭用血圧計による測定は、医療機関で定められた条件・手順により行う新起立試験と同じものではなく、病型の自己診断には使用できません。ただし、日々の血圧や心拍数の変化を記録することは、診察時に医師へ伝える客観的なデータとして役立つ場合があります。
なお、ご自宅で保護者の方がお子さんに無理な起立を行わせたり、意図的に起立試験を模した動作をさせて失神を誘発したりすることは、転倒や怪我のリスクがあり大変危険ですので絶対に行わないでください。
検査が正常でも確認したいほかの原因
朝起きられない、倦怠感がある、立ちくらみがするといった症状は、起立性調節障害以外のさまざまな状態や疾患でも現れることがあります。
「起立性調節障害の検査で明らかな異常がなかった」という場合、診察や問診の所見に応じて、以下のような可能性についても考慮しながら総合的な検討が行われます。
- 鉄欠乏や貧血: 必要に応じて鉄代謝に関する項目が検討される場合
- 甲状腺疾患: 甲状腺ホルモンの分泌異常による倦怠感や脈拍の変化
- 不整脈などの心疾患: 一時的な心拍のリズムの乱れなど
- 睡眠・覚醒相後退障害: 体内時計のリズムが大きくずれている状態
- 片頭痛: 頭痛に伴う強い吐き気や倦怠感、自律神経症状
- 耳鼻科領域のめまいなど: 平衡感覚に関わる症状
- 薬の影響: 服用中の薬剤による影響
- 心理社会的要因の関与: 環境の変化、心理的ストレス、過度な緊張などが身体症状に影響を与える場合
- その他、医師が必要と判断する疾患や状態
心理社会的要因についての捉え方
心理社会的な負担が自律神経機能や症状の現れ方に影響する場合があります。ただし、心理社会的要因だけを原因と決めつけることはできず、身体面と心理社会面の両方から評価することが大切です。
すぐに医療機関へ相談したい症状
「様子を見よう」と経過を観察している場合であっても、以下のような危険な症状が見られる場合は、躊躇せず速やかに医療機関を受診してください。
- 運動中の失神
- 胸の痛みや強い動悸を伴う失神
- 意識が速やかに戻らない
- 呼吸の様子がおかしい
- けいれんが長く続く
- 突然の激しい頭痛
- 身体の麻痺や言葉の出にくさ
- 症状が急激に悪化している
特に「意識が戻らない」「呼吸がおかしい」「けいれんが続く」といった状況では、緊急の対応が必要です。直ちに救急要請を検討してください。
症状が続く場合はいつ再受診する?
初診の検査で明らかな異常が確認されなかったものの、症状が続いて生活に支障が出ている場合は、適切なタイミングで再受診や相談を行うことが勧められます。
受診時には、以下のポイントを医師と確認してみましょう。
- どの検査項目で明らかな異常が確認されなかったのかを改めて確認する
- 現時点で考えられる症状の原因や可能性を聞く
- 症状が改善しない場合の再受診の目安(時期や条件)を確認する
- 再検査や他科(専門外来等)への紹介が必要か確認する
ほかの医師の意見を聞く方法には、別の医療機関で診察や検査を受ける方法と、現在の診断・治療方針について意見を聞く正式なセカンドオピニオンがあります。目的や費用、必要な資料が異なるため、現在の医師や希望する医療機関へ事前に確認しましょう。現在の担当医を否定するのではなく、症状の経過を継続して診てもらいながら連携を図ることが大切です。
症状が続く場合に医師へ伝えたいこと
診察時間を有効に活用し、医師へ状況を正確に伝えるために、以下のような情報をメモにまとめて持参することをおすすめします。
| 確認・記録項目 | 具体的な内容の例 |
| 症状が始まった時期と経過 | いつ頃から始まり、どのように変化・増悪してきたか |
| 症状が起きる時間帯 | 朝起きたとき、午前中、夕方、夜など |
| 引き金となる行動や場面 | 起立時、入浴後、運動中、食事中、静止して立っているとき など |
| 睡眠の状況と月経との関係 | 就寝・起床時刻、睡眠の質、女子の場合は月経周期に伴う症状変化 |
| 日常生活や登校への影響 | 遅刻や休みの頻度、部屋での過ごし方、活動量の低下など |
| 失神や意識障害の状況 | 意識が遠のいたときの状況、倒れた有無、前触れ(冷汗・視界の暗転等) |
| 服用中の薬・サプリメント | 市販薬、処方薬、サプリメントなどの使用状況 |
| 自宅での観察記録 | (測定している場合)医師の指示に基づく血圧・心拍数のメモ |
まとめ
起立性調節障害の検査で「異常なし」と言われた場合の重要なポイントを整理します。
- 「異常なし」は「症状がない」「怠けている」という意味ではない
- 「異常なし」とは、実施した検査項目で判定基準を超える異常が確認されなかったことを意味する
- 血液検査や心電図が正常でも、それだけで起立性調節障害を診断・否定することはできない
- 新起立試験で基準を満たさなくても、検査条件や当日の体調によって結果が変わる場合がある
- 危険な症状(運動中の失神、胸痛、意識障害など)が見られる場合は速やかに受診・救急要請を行う
- 生活への影響や症状の経過を記録し、再受診の時期や評価方針について医師と継続的に相談する
検査結果の「異常の有無」という言葉だけに捉われず、お子さんが現在直面している症状や生活の困りごとに目を向けながら、医療機関と一緒に解決への道筋を探っていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 検査で異常が見つからなくても、起立性調節障害と診断されることはありますか?
A. 「どの検査が正常だったか」によって意味が異なります。血液検査が正常でも、それだけでODを診断・否定することはできません。一方、新起立試験で病型判定基準を満たさなかった場合も、自動的にODと診断されるわけではありません。症状、経過、検査条件、ほかの病気の可能性を医師が総合して、今後の評価方針を判断します。
Q2. 別の医療機関を受診(セカンドオピニオンなど)してもよいでしょうか?
A. まず現在の医師へ、検査結果の意味と今後の評価方針を確認してみましょう。そのうえで別の診察や検査を希望する場合は、専門外来などへの紹介を相談できます。現在の診断・治療方針について別の医師の意見を聞きたい場合は、正式なセカンドオピニオンという方法もあります。
Q3. 「気のせい」と言われて子どもが傷ついています。親としてどう接すればよいですか?
A. 検査で異常がないと言われると「自分の苦しさを信じてもらえない」とお子さん自身も大きな不安を感じます。「今回調べた範囲では明らかな異常は指摘されなかったけれど、今つらい症状があることは分かっているよ」と伝え、本人の症状や苦しみをまず肯定してあげることが大切です。
Q4. 学校へは検査結果をどのように伝えればよいですか?
A. 「実施した検査では明らかな異常を指摘されていないものの、現在も症状が続き、医療機関で評価・経過観察を受けている」と伝えましょう。検査結果の数値の有無にかかわらず、登校時間や体育の見学など、現在お子さんに必要な配慮について学校側と共有することが重要です。
Q5. 家庭で新起立試験を再現して調べることはできますか?
A. 家庭で血圧や心拍数を記録する場合は、医師から指示された方法と安全上の注意を守ってください。失神や転倒のおそれがある状態で、自己流の起立測定を行わないことが重要です。
Q6. 検査結果が正常だった場合、今後の治療や対策はどうなりますか?
A. 明らかな異常値が確認されない段階であっても、困っている症状に応じた生活指導(立ち上がり方の工夫、水分・塩分補給、生活リズムの整えなど)が検討される場合があります。自己判断で極端な対策を行わず、主治医と今後の具体的な過ごし方や経過観察の計画を相談してください。
【参考資料】
- 日本小児心身医学会 起立性調節障害ワーキンググループ「小児起立性調節障害診療ガイドライン」『小児心身医学会ガイドライン集 改訂第3版』南江堂、2025年。
- 日本小児科学会「起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240130_GL035.pdf
- 日本小児心身医学会「起立性調節障害(一般向け解説)」https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/

