起立性調節障害と似た病気とは?診断前に除外したい疾患と検査

「朝なかなか起きられない、立ちくらみや強い倦怠感がある…うちの子は起立性調節障害(OD)かもしれない」

そう考えて医療機関を受診した際、すぐに「起立性調節障害です」と判断されるのではなく、血液検査や心電図など、さまざまな検査を案内されて戸惑う保護者の方も少なくありません。

「なぜ立ちくらみの症状で血液検査をするの?」

「新起立試験だけを受ければ診断できるのではないの?」

起立性調節障害の診断では、似た症状を示す病気がないか確認することが重要です。ただし、ほかの病気が見つからなければ自動的にODと診断されるわけではありません。症状、経過、新起立試験、重症度、生活状況などを総合的に評価します。

この記事では、公的学会の診療ガイドラインや学術論文に基づき、起立性調節障害の診断で「似た病気」を確認する理由、鑑別の対象となる主な疾患、実際の診断の流れ、そして医療機関へ相談すべき注意症状についてわかりやすく解説します。

Contents
  1. 起立性調節障害の診断で「似た病気」の確認が必要な理由
  2. 起立性調節障害の基本的な診断の流れ
  3. 鉄欠乏性貧血などの血液・栄養に関係する疾患
  4. 不整脈などの心疾患
  5. てんかんなどの神経疾患
  6. 甲状腺・副腎などの内分泌疾患
  7. 脱水・感染症など一時的な体調変化
  8. 睡眠障害・概日リズムの問題
  9. 片頭痛・小児のめまいに関係する疾患
  10. 薬の影響や栄養摂取の偏り
  11. 心理社会的要因や精神疾患はどう考える?
  12. 注意が必要な症状と受診・対応の目安
  13. 病院ではどの検査を受ける?
  14. よくある質問(FAQ)
  15. まとめ

起立性調節障害の診断で「似た病気」の確認が必要な理由

起立性調節障害の診断を進めるうえで、医師が「似た病気」の有無を確認するのには明確な医学的理由があります。

朝起きられない、めまい、倦怠感などはODだけの症状ではない

朝起きられない、立ちくらみ、めまい、倦怠感、頭痛、動悸などは、起立性調節障害でよくみられる症状です。しかし、ODだけに特有の症状ではありません。これらは身体の不調を知らせる汎用的なサインでもあり、貧血、心疾患、ホルモンの異常、神経系の疾患などでも同様に現れることがあります。

症状チェックだけでは診断できない

インターネット上のセルフチェックシートなどで項目が多く当てはまったとしても、それだけで「起立性調節障害だ」と確定することはできません。症状を起こしている原因が別の病気にある場合、起立性調節障害としての対応だけを行っていても改善しないばかりか、本来治療すべき基礎疾患を見過ごしてしまうリスクがあります。

別の疾患を確認したうえで新起立試験を行う

日本小児心身医学会が定めるガイドラインでも、立ちくらみや起立不耐症を来す他の疾患を確認したうえで、自律神経機能を調べる「新起立試験」を実施し、総合的に判断することが定められています。

ODと別の疾患が併存する場合もある

「別の病気がないからODである」「ほかの病気があるからODではない」という単純な二者択一にならないケースもあります。例えば、鉄欠乏性貧血と起立性調節障害が同時に存在している場合などです。この場合、両方の側面から適切にアプローチしていく必要があります。

「検査が正常=症状が気持ちの問題」ではない

一般的な血液検査や画像検査で明らかな異常が見つからなくても、症状が存在しないことにはなりません。ODでは、起立時の血圧や心拍数など、循環調節機能を新起立試験などで評価します。症状は本人が実際に経験しているもので、気持ちの問題と決めつけられません。

起立性調節障害の基本的な診断の流れ

起立性調節障害の診断は、単一の検査数値だけで自動的に決まるものではなく、いくつかのステップを組み合わせて総合的に行われます。

  1. 症状と経過の詳しい確認(問診): どのような症状が、いつから、どの時間帯に強くなるのか、日常の様子を詳しく聞き取ります。
  2. 診察と基礎疾患の確認: 聴診や触診、基本的な神経学的診察を行い、身体的な異常がないか確認します。
  3. 必要に応じた基礎検査: 血液検査や心電図などを行い、貧血や心疾患、内分泌疾患などの可能性を確認します。
  4. 新起立試験: 横になった状態と立ち上がった状態での血圧・脈拍の変化を測定し、循環調節のタイプを調べます。
  5. 病型・重症度の評価: 新起立試験の結果から病型を評価します。重症度については、検査結果だけでなく、日常生活への影響なども含めて判定します。(サブタイプには「起立直後性低血圧(INOH)」「体位性頻脈症候群(POTS)」「血管迷走神経性失神(VVS)」「遷延性起立性低血圧(DeOH)」などがあります)
  6. 心理社会的な影響や生活状況の評価: 睡眠習慣、学校生活の様子、ストレス要因などを総合的に確認します。

※上記は一般的な流れであり、お子さんの年齢、症状の現れ方、身体所見によって、必要な検査項目や順番は医師が個別に判断します。すべての患者さんに一律で同じ検査を行うわけではありません。

鉄欠乏性貧血などの血液・栄養に関係する疾患

起立性調節障害と似た症状を引き起こす状態として、鉄欠乏性貧血をはじめとする血液・栄養面の問題があります。

倦怠感、めまい、動悸、息切れなどが似る

体内の赤血球やヘモグロビンが不足して貧血状態になると、全身の組織へ酸素が十分に運ばれなくなります。その結果、強い倦怠感、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れなど、起立性調節障害と酷似した症状が現れます。特に思春期の女子では月経の開始に伴い、鉄分が不足しやすくなります。

医療機関での評価と判断

診察では、月経の状況、毎日の食事量、急激な体重変化の有無などが確認され、必要に応じて血液検査(ヘモグロビン値やフェリチン値など)が行われます。

【注意】自己判断でのサプリメント利用について

鉄サプリメントを自己判断で使用すると、必要のない摂取や過剰摂取につながり、吐き気、腹痛、便秘などの副作用が生じる可能性があります。特に子どもの誤飲や大量摂取は危険なため、検査と医師の判断を優先してください。

不整脈などの心疾患

心臓や血管の機能に異常がある場合も、起立性調節障害とよく似た症状が現れることがあります。

動悸、胸痛、失神などが重なる

不整脈や心筋の疾患などがあると、脳への血流が一時的に低下し、強い動悸、胸の痛みが現れたり、失神(意識を失って倒れる)を起こしたりすることがあります。

心電図や各種検査による確認

診察では、胸の音を聴く聴診のほか、心電図検査などが行われます。症状の現れ方によっては、長時間記録するホルター心電図や心超音波検査などが検討されることもあります。

運動中に突然胸が痛くなる、運動中に倒れてしまうといった症状がある場合や、ご家族の中に若くして突然死された方がいる場合は、大切な情報となりますので医師へ伝えてください。

てんかんなどの神経疾患

立ちくらみがひどくなって意識を失う症状は、起立性調節障害でも認められることがあります。しかし、意識を失う現象自体は神経系の疾患でも起こり得ます。

意識消失の背景と医師への伝え方

起立性調節障害による失神は、立ち上がった際に脳への血流が急速に低下することで起こります。一方、てんかんなどの神経疾患による発作は脳の電気的信号の異常によって起こります。

受診の際は、発症時の姿勢、運動との関係、前触れ、身体の動き、意識が戻るまでの時間、回復後の様子などを医師へ伝えます。安全を確保できる場合は、発作時の動画が診断の参考になることもありますが、撮影より救護を優先してください。

初めて意識を失った場合や、けいれん・回復の遅れがある場合は医療機関へ相談してください。家庭内で無理に自己診断しようとせず、医師の診察を受けることが重要です。

甲状腺・副腎などの内分泌疾患

体内のさまざまな代謝や機能をコントロールするホルモンのバランスが崩れる「内分泌疾患」も、起立性調節障害と似た症状を示すことがあります。

ホルモン異常による全身症状

例えば、甲状腺ホルモンの分泌異常や、副腎皮質ホルモンが不足する病気などでは、強い倦怠感、動悸、めまい、体重の急激な変化、発汗の異常などが生じることがあります。

問診と身体所見に応じた検査

問診でこれらの症状が疑われた場合や、首の腫れなどの身体所見が認められた場合に、血液検査でホルモン値を測定します。全員に一律でホルモン検査を行うわけではありません。

脱水・感染症など一時的な体調変化

長引く起立性調節障害とは異なり、一時的な体調不良によって起立時の症状が悪化しているケースもあります。

急な水分・塩分喪失の影響

発熱、下痢、嘔吐などによって身体から水分と塩分が失われると、一時的に脱水状態となり、血圧を維持できなくなって強い立ちくらみやめまいが起こります。

経過の鑑別

急激に症状が始まったのか、何週間・何ヶ月も前から慢性的に続いているのかを区別することが大切です。また、「水分を取ればすべて解決する」とは限らないため、体調の変化全体を見守る必要があります。

睡眠障害・概日リズムの問題

「朝起きられない」「夜眠れない」という悩みは、起立性調節障害の症状の一つですが、睡眠に関する疾患が関係している場合もあります。

睡眠リズムのずれる病気と関係性

体内時計のリズムが大きくずれてしまう概日リズム睡眠・覚醒障害の一つである「睡眠・覚醒相後退障害」などが挙げられます。

起立性調節障害に伴って睡眠リズムが崩れている場合もあれば、睡眠障害が併存・関係している場合もあり、丁寧な鑑別や評価が行われます。単に「本人の怠け」と決めつけず、睡眠の状況を客観的に確認することが大切です。

片頭痛・小児のめまいに関係する疾患

頭痛やめまいが強く現れる場合、頭痛や耳の専門的な疾患が影響していることもあります。

片頭痛や耳鼻科的疾患の可能性

小児期・思春期の片頭痛では、頭痛だけでなく吐き気やめまい、光・音への過敏を伴うことがあります。また、耳の機能に関わるめまい疾患などが関係している場合もあります。

頭痛の頻度や痛み方、めまいの質に応じて、耳鼻咽喉科や神経系の評価が必要になることがあります。

薬の影響や栄養摂取の偏り

現在服用している薬や、日常的な栄養状態が症状に影響を与えているケースもあります。

処方薬・市販薬・エナジードリンクの影響

薬の副作用として眠気や立ちくらみ、倦怠感が現れることがあります。また、カフェインを含む飲料などの摂取状況が影響を与えることもあります。

摂食障害・極端な体重減少

食事量の低下や体重減少が著しい場合(摂食障害など)、栄養不良や循環機能への影響から起立時の症状が現れることがあります。これを単なる食欲不振と決めつけず、注意深く観察することが重要です。

【注意】自己判断での服薬中止は禁物です

服薬中の薬が気になる場合でも、自己判断で勝手に服薬をやめたり量を減らしたりしないでください。必ずお薬手帳を持参し、医師や薬剤師に相談してください。

心理社会的要因や精神疾患はどう考える?

起立性調節障害は、心理社会的ストレス(学校や家庭での悩み、環境の変化など)によって症状が変化しやすい特徴を持っています。

「身体の評価」と「心理社会的評価」の両立

心理社会的要因が影響しているからといって、身体症状を否定して「心の問題」と決めつけるのは適切ではありません。起立性調節障害では身体面と心理社会面の両方を評価します。

また、不登校の状態があることだけで診断を行うこともありません。身体面の確認と並行して、状況に応じた包括的なサポートが行われます。

注意が必要な症状と受診・対応の目安

以下のような症状が見られる場合は、状況に応じて適切な対応を行ってください。

緊急性が高く、救急要請を検討する症状

  • 意識が戻らない
  • 強い胸痛や呼吸困難がある
  • けいれんが続いている、繰り返している、または意識が戻らない
  • 突然の手足の麻痺や言語障害がある
  • 突然の激しい頭痛が起きた

早めに医療機関へ相談する症状

  • 短期間での急激な体重減少
  • 高熱が長く続いている
  • 症状が日々急速に進行・悪化している
  • 明らかな血便や、タールのように真っ黒な便がみられる

病院ではどの検査を受ける?

医療機関を受診した際に行われる主な検査や評価内容は以下の通りです。医師が症状や身体所見に応じて選択します。

検査・評価主な確認内容
問診・身体診察症状の経過、発症時の状況、生活状況、血圧・脈拍、心音、神経学的所見など
血液検査貧血、炎症、電解質、肝・腎機能など。症状に応じて甲状腺機能などを追加
心電図心拍のリズムや伝導の異常など
新起立試験安静臥位から起立した際の血圧・心拍数の変化と症状を確認し、ODの病型を評価
追加検査問診・診察結果に応じて、ホルター心電図、心エコー、脳波、画像検査、耳鼻科的検査などを検討

すべての検査を全員が受けるわけではありません。医師が必要性を判断しながら進めます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 症状が当てはまれば起立性調節障害と診断できますか?

A. 症状の当てはまりだけで確定診断はできません。症状、経過、他の疾患の有無、新起立試験の結果などを総合的に確認して判断されます。

Q2. 血液検査が正常ならODですか?

A. 血液検査が正常でも、それだけでODと診断できるわけではありません。また、実施した検査項目によって分かる範囲も異なります。問診、診察、新起立試験などを組み合わせて判断します。

Q3. 新起立試験だけで診断は確定しますか?

A. 新起立試験は病型を評価する重要な検査ですが、試験単独で確定するものではありません。症状の経過や他の状況とあわせて総合的に判断されます。

Q4. 検査で異常がなくても症状があるのはなぜですか?

A. 一般的な検査で明らかな異常が見つからなくても、症状が存在しないことにはなりません。ODでは、安静時には分かりにくい起立時の循環変化を新起立試験で評価します。症状が続く場合は「異常なし」で終わらせず、検査結果と今後の評価方針を医師へ確認してください。

Q5. 何科を受診すればよいですか?

A. 子どもや高校生は、まず小児科またはかかりつけ医へ相談します。成人は一般内科を入口として、症状に応じて循環器内科や脳神経内科などへ紹介される場合があります。

Q6. 別の病気が見つかった場合、ODではないのですか?

A. 別の病気が主原因である場合もあれば、貧血など他の状態と起立性調節障害が併存している場合もあります。主治医のもとで状態を正しく評価し、対応を検討します。

まとめ

起立性調節障害の診断において、似た病気の確認を行うことは、安全に正しい評価を行うための大切なプロセスです。

  • 似た症状を示す病気がないか確認し、症状や新起立試験等を総合的に評価する
  • 症状チェックや一部の検査だけで自己判断しない
  • 検査で明らかな異常が見つからなくても、本人の症状を気持ちの問題と決めつけない
  • サプリメントの自己判断での使用や服薬の中止は行わない
  • 強い胸痛や意識障害などの緊急症状がある場合は迅速に対応する

つらい症状の背景をしっかりと確認し、医療機関と相談しながら適切な評価と対応を進めていきましょう。

【参考資料】

  1. 日本小児心身医学会「起立性調節障害」https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/
  2. 石井和嘉子「小児起立性調節障害診療ガイドライン改訂第3版の概説」https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/85/2/85_51/_article/-char/ja
  3. 「小児のめまいへの対応」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/83/3/83_141/_html/-char/ja
  4. 呉宗憲「二次障害としての起立性調節障害」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/64/5/64_64.5_441/_article/-char/ja

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です